バティックへのお誘いInvitation
ロウケツ染めのジャワ更紗をご存じですか?
この布をインドネシア語で
Batik・バティックと言います。
伝統美のミニ知識をちょっと覗いてください。
バティックの語源
バティックはインドネシア語で沢山banyakの「ba」と点titikの「tik」の造語で「Batik」と呼ばれる様になった説と、古ジャワ語の彩色する「Batihik」が転じたとも諸説あります。
Batikと呼ばれるようになったのは20世紀に入ってからですが、18世紀後半には知名度は既にヨーロッパに伝わり、20世紀半ばロウケツ染めを総称してBatikといわれるようになりました。
また、ロウ引きに使う道具チャンティン(canting)は世界共通語になっています。
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チャンティンとは
ロウケツ染めは布の両面をロウ線でブロックして色を区分する防染です。加熱ロウをすくって先の細い管から流れ出るロウで線を描いたり面を塞いだりする道具をチャンティン(インドネシア語でヒシャクの意味)といいます。管の太さは0.1~3cm程、全体の長さは持ち手から管先まで12cm程です。
※教室ではインドネシア製のチャンティンの使い方から始めます。
バティックの歴史
起源は8世紀頃にさかのぼりインド更紗(さらさ)といわれていますが、その技法は未熟であったようです。
インドネシアで独自の制作が始まったのは17世紀、あるいはそれ以前の中部ジャワ島と推測されます。
バティックがジャワで開花した大きな要因は中部ジャワ島のジョクジャカルタとソロの王族貴族が愛用していた事から技術が向上し、伝統染めとして伝授されてきました。
また、技術は女性達の手仕事として親から子へ代々伝えられてきました。現在もロウ引き作業は女性達の仕事です。時代の流れと共にバティック工房はジャワ島の他の地域にも広がり地方色が生まれました。
現在もインドネシアの暮らしには欠かせない布として愛用されています。
2009年10月5日にユネスコの無形文化財世界遺産に認定されました。この日を記念して10月5日はインドネシア政府はバティックを身につけようと呼びかけています。
技法の違いと品質
バティックの制作技法は4種類あります。上質なシルクのプリントスカーフもありますので技法の違いが価格と品質の基準とはいえません。
ここではロウ線にポイントを置いて制作技法の説明をしましょう。
バティック布はサロンといって一着幅おおよそ110〜120cm×長さ210〜220cmで売られています。
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Tulis(トゥリィス)
最初から仕上げまで手描き作業なので布の裏面もロウ線と色が鮮明で表裏の判断が難しいほどしっかりと模様が描かれています。シルク、木綿布は上質です。
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Cap(チャップ)
真鍮製のスタンプ版で加熱ロウを均等に付着して手作業で布上にプレスします。連続模様や縁模様などに多く使われます。
Kombinasi(コンビナシー)
チャップと手描きの組み合わせです。スタンプで押した模様の一部に細かな点や線を手描きで加えるので確認は最も難しい技法です。
Cetak(チェタク)
機械プリントです。布の裏面は線が抜けていたり彩色もかすれていたりします。
バティックの地方色
バティック生産の主要な町村はジャワ島に集中していて歴史も地方色も特徴があります。その幾つかの町をご紹介しましょう。
ジャワ島の西部チルボン、プカロガン、中部ジョクジャカルタ、ソロ、マドゥラ島、スマトラ島のジャンビです。どの町も工房の見学は可能のようです。
バリ島には本来バリバティックと呼ばれるバティックの歴史はありません。しかし、現在は旅行者がパレオとして愛用するカインパンタイ(浜辺の布)と呼ばれているトロピカル模様やむら染めのロウケツ染めが大量に生産されています。
Cirebonチレボン
ジャワ島西部の港町は古くから近隣国の文化が交流する拠点でした。雨雲を意味した赤や青の濃淡は中国文化の影響を受けています。代表的なメガ模様はグラデーションの重め染めです。
Pekalonganプカロガン
ジャワ島北西部の町です。植民地当時オランダが持ち込んだ絵葉書、壁紙、陶器等からの花柄が特徴です。布端の一部デザインや色彩の違う布をパギソレ(朝夕)といい1枚で2枚の布のように使い分けて着用します。
Jogjakartaジョクジャカルタ
ジャワ島中部のバティック発祥の街は現在も王家が存続しています。パランと呼ばれる斜め模様と茶色、白、黒の色彩は王族以外の着用は禁じられていた時代もあり格式高いバティックです。
Soloソロ
「ブンガワン・ソロ」の歌で知られるソロ河のある町はジャワ中部に位置します。ジョクジャカルタ同様に王国の歴史がある古都です。王宮文化が色濃くて明るい茶色と黄色が特徴です。
Madulaマドゥラ島
ジャワ島北東部の小さな島の三地域で生産されています。太いチャンティン使いは勢いがありロウ線は荒く、素朴かつ魅力的です。天然の茜染で有名です。
Jambiジャンビ
スマトラ島北中部の港町はマラッカ海峡に面した古くからの東西交易の中継地であり内陸交通の拠点でもありました。その為ジャワ、インド、アラブの影響を受けた多彩なモチーフがあります。